2024年春ドラマ、TBS日曜劇場「アンチヒーロー」第10話が放送されました。
明墨が逮捕された。
白木の裏切り…
裁判には伊達原が検事として立つ。
明墨の裁判はどうなる?
志水の再審は?
伏線回収となる最終回をネタバレありでどうぞ!
「アンチヒーロー」最終回ネタバレ
明墨正樹(長谷川博己)が証拠隠滅の罪で逮捕された。
緋山啓太(岩田剛典)も明墨と同時に証拠隠滅の教唆犯として身柄を拘束された。
緋山のジャンパーを検察に渡した白木凛(大島優子)とはずっと連絡が取れなかった。
明墨は黙秘を続けていたが、ジャンパーの緋山の血痕と白木の証言、そして緋山も証言をし始めていて、明墨が間違いなく罪に問われるだろうと緑川歩佳(木村佳乃)が伊達原(野村萬斎)に報告した。
伊達原は久しぶりの裁判にワクワクしていた。
明墨には証拠隠滅の罪だけではなく、12年前の事件のことも憶測で検察の名誉を傷つけた罪があると伊達原は話す。
明墨の保釈は無理そうだと紫ノ宮飛鳥(堀田真由)は青山憲治(林泰文)に報告した。
明墨本人は「志水さんの再審の手がかりを見つけてくれ」と言うだけだった。
赤峰柊斗(北村匠海)が戻って来た。
12年前の事件で毒物鑑定をし、現在は亡くなっている平塚専門官の元部下の金田に会って来た赤峰。
金田は平塚が亡くなる前に「化学者として許されない過ちを犯した。お前はそうなるな。」と言葉を残されていた。
赤峰から電話をもらうまでは鑑定結果の改ざんなんて想像もしていなかったが、平塚の言葉の意味は改ざんなのかもしれないと金田は話した。
赤峰と紫ノ宮は明墨に面会に行き、改ざんを後悔した平塚が善意で残した資料があると話した。
元部下である金田はすでに科捜研を退職していて、今働いている同僚に連絡を取っているところだった。
明墨との面会後、平塚が辞めて8年も経っていることから、資料があるなら科捜研の資料室とかか?と話しながら事務所のビルに入る赤峰と紫ノ宮に「何の話?」と声をかけてきたのは白木だった。
白木は事務所に私物を取りに来たと話し、赤峰と紫ノ宮に挨拶をし、荷物を持った菊池検事(山下幸輝)と去ろうとした。
「何で先生を?」と聞く赤峰に白木は「単純に目が覚めたってだけ。だっておかしいでしょ。殺人の証拠を隠すなんて。悪いけど間違ったことしたとは思ってないから。」と言い、去って行った。
明墨の裁判は世間の注目を集めていた。
緑川が罪状について読み上げ、白木が「緋山さんは無罪じゃありません。」と証言した。
緋山の血の付いたジャンパーが明墨法律事務所で見つかり、緋山のDNAが検出されたことから、犯行時に緋山が着用していたことは間違いないと緑川は言った。
緋山も証言台に立つ。
緋山は羽木の殺害について認めた。
ジャンパーをゴミ処理場で処分をしたことについて、緋山はためらいながらも、明墨の指示であったことを証言した。
ここで伊達原が立ち上がり「なぜ罪を隠せと言ったんだと思いますか?」と緋山に聞いた。
「12年前の事件の冤罪を晴らすためだと言っていました。」と緋山が答える。
「それは糸井一家殺人事件のことですね?」と伊達原が聞き、傍聴席はざわつく。
伊達原は中央に出てきて「志水裕策死刑囚の冤罪疑惑については東京中央新聞でも報じられ、世間でも話題になりました。」と話す。
その事件との関係について聞かれた緋山は昔の動画について話す。
「その昔の動画は見つかったんですか?」と伊達原に聞かれた緋山は「いえ。」と答える。
続けて伊達原は「その動画が存在するということは証明できますか?」と聞き「できません。」と緋山が答える。
「では、志水さんが冤罪だという確証はないということですね?」と聞く伊達原に緋山は明墨の方をチラッと見て「はい。」と答えた。
弁護側の尋問で起訴状について赤峰に聞かれた明墨は全てを認めた。
その理由についても「糸井一家殺人事件で死刑判決を受けた志水裕策さんの冤罪を晴らすことが目的でした。」と答えた。
「この法廷で何か言いたいことはありますか?」と聞かれた明墨は「必ず志水さんの冤罪を晴らします。」と伊達原の方を向きながら宣言した。
伊達原は志水の冤罪疑惑についての東京中央新聞の記事を出し、記事を書いた沢原麻希(珠城りょう)が明墨の依頼人であったことを指摘した。
沢原に情報を提供したことを明墨が認めると「証拠がないのに、不確かな情報でマスコミを煽り、世間を騒がせた。」と伊達原は言った。
明墨はそれを否定し「証拠はありませんが、冤罪だと確証するだけの根拠はありました。」と答えた。
根拠について聞かれた明墨は桃瀬礼子(吹石一恵)が残したファイルについて話す。
それによると、深澤(音尾琢真)という刑事が「志水さんのアリバイを示す動画が見つかったが、もみ消された」と証言している。と話した明墨は「伊達原検事正、あなたによって。」とハッキリと言い、傍聴席がざわつく。
伊達原は笑い始め、新しい証拠を出した。
それは、明墨を逮捕した時に押収した桃瀬が残した「糸井一家殺人事件」のファイルだった。
「確かに証拠をもみ消したのは私だと書いてありましたが、その根拠となる論理は破綻していると言わざるを得ませんでした。」と言う伊達原。
裁判長に詳細を聞かれた伊達原は憶測や根拠のない噂レベルの話が並べられただけと言い、深澤刑事にも話を聞いたが「桃瀬検事のことも、動画のことも何も知らない。」と言っていたと話す伊達原。
赤峰が「ここは検事正の弁明を聞く場では…」と口を挟むが「弁明などではなく、被告人の動機を明らかにするためには避けて通れない事柄です。」と伊達原は裁判長に向かって言い、続行を認められた。
このファイルを書き残した時の桃瀬がすでに病に侵されていたことで、「死の瀬戸際で自身の存在意義を確かめるために人を救いたいという使命感があったのではないか?」という伊達原の言葉に怒りを露わにする明墨。
検察官時代の明墨の話を持ち出し「極端な正義感は時に道を誤らせる。検察を辞める前の数カ月間、あなたは根拠のない憶測と虚言のパフォーマンスを繰り返し、同僚たちを困惑させていた。」と伊達原は言う。
赤峰が異議を申し立てても「現にあなたは今も殺人犯を無罪にして証拠を隠滅し、何の確証もない情報で世間を騒がせ、それが正義のためだと信じている。違いますか?」と明墨に問いかける伊達原。
赤峰は「先ほどから何の根拠もない憶測による検察官の発言が続いています。適切な訴訟指揮をお願いします。」と申し立て、裁判長もある程度の根拠のある質問をと注意した。
それでも、明墨が自分の元部下であったことから、憶測よりは実感を伴った感想と伊達原は続けた。
最後に言いたいことを伊達原に問われた明墨は「随分と必死ですねえ。」と言った。
「当然でしょう。不正の疑惑がある人間に対して真実を追い求めるのは検察として当然の使命ですからね。」と答える伊達原。
そんな伊達原に「検事正は真実を追い求めているというより、必死でご自身の疑惑を払拭しようとしているだけのように見えますね。」と返す明墨。
「そんなことをしても無駄ですからね。」と言う明墨に意味を問う伊達原。
「間もなく志水さんの再審請求を行う予定です。新証拠が見つかりましたから。」と明墨は言う。
「新証拠?」と問う伊達原だが、弁護人席で赤峰と紫ノ宮が戸惑った表情でいるのを見て「だったら見せてもらいましょうか。その新証拠とやらを。」と自身満々に言った。
緑川も立ち上がり「志水死刑囚が冤罪でないとすれば、被告人がやってきたことは何の正義でもない。司法への冒涜です。被告人が自己の行為を正当化するならば、その新証拠が何であるかは語られる必要があるはずです。」と言い「私も同じ意見です。」と明墨が言う。
そして、次回公判で弁護人から証拠を示すと言う明墨。
裁判長も、12年前の事件が大きな争点となるようなので、弁護側が新証拠に関連する事実について主張するように言った。
第一回の公判が終わり、紫ノ宮は「新証拠がある」と言った明墨の発言を疑問視した。
赤峰が「先生に確認したいことがあって…もしかしたら証拠はもう…」と言いかけると青山が現れた。
青山は改まって「お二人にお話ししたいことがあります。」と言った。
伊達原は明墨の言っていた新証拠について白木に心当たりを聞いていた。
白木は自分へのメリットを問うと、契約の金額の上乗せを新しく紹介した法律事務所の局長へ頼むと伊達原は言った。
それを聞いた白木は「ボツリヌストキシン」と答えた。
白木は「明墨はあなたが毒を書き換えたと思っているんです。」と伊達原に教えた。
緑川は弁護側からの証拠調べ請求が来て科捜研の薬毒物鑑定の報告書だと言い、伊達原に渡した。
だが、伊達原は「見るまでもない。それは偽造書類だ。」と言った。
改ざんの事実がない以上、新証拠の存在自体がく、苦し紛れのでっち上げと言い切る伊達原。
証拠請求に不同意と伝えようとする緑川に「同意だよ。せっかく撒いてくれた餌だ。食いついてあげないとね。」と言った。
第二回公判。
赤峰が採用された新証拠について明墨に問う。
糸井一家殺人事件は飲食物の中に毒物が混入されたことによる毒殺事件。
当時の捜査資料によれば、現場のテーブルからタリウムが検出され、遺体からも同じ毒素が検出されたことにより、死因は硫酸タリウムによる中毒死と断定された。
赤峰は科捜研で行われた薬毒物鑑定結果を示し、この書類が明墨の言っていた新証拠であることを確認した。
この書類は科捜研の資料室で見つかり、事件の毒物鑑定を行った平塚が残したものであった。
この書類によれば2012年の3月12日に毒物鑑定が行われていた。
その結果、検出されたのはボツリヌストキシンで致死量をはるかに超える量だった。
だが、捜査資料にはボツリヌストキシンとは記載されず、「タリウムが検出された」という記載のみだった。
「検査結果が反映されていない。なぜそんなことが起こったと考えましたか?」と赤峰が問うと「鑑定結果が書き換えられたからです。」と答えた明墨は「そうですよね。伊達原検事正。」と伊達原に直接問う。
異議を申し立てようとした緑川を伊達原は制止した。
「そう考える理由は何ですか?」と赤峰が問う。
「そう考える理由は2つあります。」と明墨は答える。
1つは伊達原には志水のアリバイを示す動画をもみ消した疑いがあること。
もう1つは当時の検察が差し迫った状況にあることを上げた。
差し迫った状況とは、逮捕された志水はずっと否認を続けていて、殺人を裏付ける物証は何一つ出ていなかった。
だが、志水の勾留はあらゆる理由をつけ、勾留延長や再逮捕が繰り返され、65日にも及んだ。
それでも志水は否認を続け、最後の勾留満期が近づき、これ以上勾留延長する理由はない。
物証も自白もなければ釈放するしかない。
一方、科捜研からは薬毒物鑑定の結果、遺体からボツリヌストキシンが検出されたとの鑑定結果が届いた。
これは検察にとっては非常に都合の悪い結果だった。
ボツリヌストキシンは研究者でもない限り手に入らなかい毒で、志水がどうやって入手したのか説得力のある理由を付けるのは困難だった。
その点、硫酸タリウムなら都合が良かった。
志水の会社の倉庫には殺鼠剤としての硫酸タリウムが常備してあったから。
当時は管理もずさんで、社員なら誰でも持ち出せる状況だった。
「つまり、硫酸タリウムだったということにすれば、志水さんの起訴をする上での大きな後押しとなりうる状況だったということですね。」と赤峰が聞く。
「その通りです。この鑑定結果を理由についに志水さんを再逮捕したんです。」と明墨は言う。
その後で捜査に呼ばれた明墨は「当時の実感から言っても、この鑑定結果は私を含めた検事たちにとって、起訴する上での有力な根拠となっていました。」と答え、赤峰は弁護側の尋問を終えた。
反対尋問に立つ伊達原は「何も知らない人が聞いたら、私が鑑定結果を書き換えたように信じてしまいそうだ。」と余裕の笑みをこぼす。
「だが、それは真実ではない。」と伊達原は言い切る。
毒の鑑定には時間がかかり、少々混乱を招いた。
「それでも全て説明できますよ。お聞きになりますか?」と伊達原は聞き「ええ。ぜひ。」と明墨は答えた。
事件発覚当初に現場で行われた簡易検査の結果にはボツリヌストキシンが反応があり、現場の警察官に周知された。
だが、しばらくして現場から新たにタリウムが検出されたと報告があった。
タリウムの検査には非常に特殊な検査機器が必要で、他の毒物とは一緒に検査ができない。
そのため改めて鑑定を行う必要があり、法医学教室から遺体を引き取り、科捜研で詳細に調べてもらった。
伊達原は当時行われた薬毒物鑑定結果の正式な記録と、弁護側が示した鑑定書を並べて出した。
ボツリヌストキシン、タリウム2つの検査が行われており、「つまり私も平塚先生も検査結果を捻じ曲げてなんかいないんですよ!」と伊達原は言う。
遺体に含まれていたボツリヌストキシンの量は致死量のわずか100分の1以下で人間が死ぬような量ではなかった。
ボツリヌストキシンは食品内で自然に発生することがあるため、飲食物に微量が含まれていたのだろう。
事件と関係ない毒素と分かった以上、2つの毒の記載があると誤解を招くと捜査資料には記載がなかった。
そう話した伊達原は「これまでの経緯、あなた何も知らなかったでしょ?」と明墨に言った。
「なるほど。それがあなたが作り出したストーリーですか。」と明墨は言った。
「しかし、おかしいですね。弁護側が出した証拠と検察側の証拠、どちらも科捜研において、全く同じ遺体を調べている。にもかかわらず、なぜこうも結果が異なるのか。」と問う明墨に「どちらかがニセモノということでしょう。」と伊達原は答える。
そして「あなた方が出したこの書類、偽造書類ですよね?」と大きな声で言う。
「何の根拠もない決めつけでの質問はやめてください。」と赤峰が反論する。
だが伊達原は「根拠ならありますよ。」と言う。
伊達原が示した証拠は科捜研から正式に取得した書類で、改ざんのしようがない。
科捜研の資料室から見つかったという曖昧な書類より信用性が高い。
「断言します。このような書類、捏造しない限り、存在するはずがない。」と伊達原は言った。
明墨は「存在するはずない。」と伊達原の言葉を繰り返した。
「なら何で存在しないはずの書類をあんなに必死になって探したりしたんですか?」と明墨は伊達原に聞いた。
「何のことでしょう?」と答える伊達原だが明墨は「検事正は最近科捜研の資料室に出入りしています。」と裁判長に向かって言った。
6月の13日、午後7時から8時頃のことと「お心当たりがあると思いますが?」と明墨は伊達原に聞く。
「事実無根だ。」と答える伊達原に「映像があります。」と明墨は言う。
「防犯カメラの事かな?それならあの室内にはありません。」と答える伊達原に明墨は笑いながら「さすがよく把握されていますね。ですが違います。資料室内に設置された別のカメラの映像です。」と言う。
裁判長は、その映像の提出の意向を弁護側に確認し、検察側も至急確認するように言った。
検察側の確認が終わり、映像を流そうとしたところ明墨が発言を願い出た。
「この映像に関する伊達原検事正の認識は極めて重要です。異例とは思いますが被告人の立場から伊達原検事正に求釈明をさせていただけないでしょうか。」と申し出た。
紫ノ宮が立ち上がり「ただいまの求釈明ですが、当時の事を知る被告人自らさせていただけないでしょうか。私たちが責任を負います。」と付け加えた。
裁判長に検察側の意見を聞かれた伊達原は「裁判長がよろしければ私どもは構いません。」と答え、裁判長はこの場での求釈明を認めた。
明墨は立ち上がり、赤峰に映像を再生させる。
それは資料室で資料を探す伊達原の姿だった。
映像を止めた伊達原は「これは伊達原検事正。あなたですよね。」と聞いた。
「ああ。いや。」と立ち上がり、古い事件の資料を探しに行っていたことを思い出したと話す伊達原。
だが、映像で伊達原が手にしたファイルの表紙には「平塚」と書かれていた。
そのファイルから1枚の書類を抜いた伊達原。
その証拠は弁護側が出した証拠と同じ鑑定結果の書類だった。
伊達原はこの書類を持ち出し、その後は1度も戻ってこなかった。
「なぜあなたはこの書類を持ち出したんですか?なぜ先ほど、この書類は存在するはずないと言ったのでしょうか?やはりご自分が持ち出し確かに処分したからでしょうか?」と問い詰める明墨。
裁判長から、今の求釈明について趣旨をはっきりさせるように言われた明墨は順を追って説明した。
事件の薬毒物鑑定を担当した平塚はすでに他界しているが、元部下によれば亡くなる前に自らの過ちを後悔し何かを託そうとしていた。
伊達原がその情報を入手し、すぐ探しに行ったのがあの映像だと明墨は説明した。
「かつて自らが行った改ざんの証拠を持ち出し、隠滅を図ったのでしょう。」と明墨は言った。
そして「それが私が用意したニセモノだとも知らずにね。」と続け笑った。
「ニセモノ…」と驚く伊達原は傍聴席にいた白木の方を見るが、白木の姿は傍聴席にはなかった。
伊達原が資料室に入る前に、原本は弁護側で入手していた。
だが、それを裁判で提示したところで、伊達原に言い逃れされてしまう。
だから平塚が残した鑑定書を自らに不都合な証拠と考え、それを伊達原が消し去ろうとする瞬間を捉えることが必要だった。
そこで、この書類そっくりなニセモノを作らせ、資料室に仕込み、伊達原が探しに来ることを見越して、小型カメラも一緒に設置した。
「違う違う。これは何かの間違いだ。」と否定する伊達原は「そもそも君の部下が警察内部に侵入できるわけがない。」と明墨に言った。
「入れるのは限られた人間のみ。例えば警察内部の人間とかもしくは…検察官とか。」と言った明墨の言葉で伊達原は「君か。」と菊池の方を振り返ったが菊池は首を振る。
そして伊達原がゆっくり緑川の方を見ると、緑川は笑みを見せた。
「不正の疑惑がある人間に対して真実を追い求めるのは、検察官として当然の使命ですよね。」と伊達原の言葉を引用した緑川。
そしてこの件は検事総長も了承済みだと緑川は言った。
第二回公判の三日前。
青山が赤峰と紫ノ宮に「お二人にお話ししたいことがあります。」と言って呼んだのは白木と緑川だった。
この前会った時に冷たい態度を取ったことを詫びた白木は菊池のいる手前、ああ言うしかなかったと話した。
青山も伊達原の手前、ギリギリまで明かすなと明墨に言われていたと話す。
紫ノ宮は緑川もこちら側だと状況が飲み込めた。
緑川は、明墨と桃瀬と司法修習生の同期だった。
明墨が桃瀬から伊達原の不正について初めて聞いた時、緑川も同席していたのだ。
そして、緑川も明墨と同じく桃瀬の言い分を信じてあげられなかった。
明墨が帰った後で、志水を自白させたのが明墨であったのを教えたのも緑川だった。
桃瀬は明墨だけではなく緑川にも糸井一家殺人事件のファイルを託していた。
緑川は桃瀬のファイルを読み、伊達原の不正の証拠を掴むために死にものぐるいになった。
伊達原と同じ東京地検に配属希望を出し、それが通り、伊達原の目に留まるような検事を目指した。
そのころ、明墨は検事を辞めることを緑川に伝えた。
内部から探っても、潰されるだけだからとの決意だった。
明墨が検察の外から、緑川が検察の中から、志水のアリバイを示す動画を捜すことにした。
進展がないまま時間だけが過ぎたが、羽木精工の事件をきっかけに全てが動き出した。
緋山が昔住んでいたのが志水がぬいぐるみを捜していた公園から近いことに気が付いた緑川が調べてみると、緋山の口座にスピルドアからの入金記録があった。
入金時期もちょうど12年前だったことから、スピルドアや江越(迫田孝也)のことを何か聞き出せるかもしれないと思い、入念に取り調べさせた。
本当は自分が取り調べたかったが、検察官の取り調べは録音が残るため、12年前のことを聞いたら、必ず伊達原の耳に入ると考え、姫野(馬場徹)に取り調べさせた。
そして、明墨に弁護を頼んだ。
富田正一郎(田島亮)の事件を担当したのも、自ら名乗り出た。
富田議員(山崎銀之丞)の不正を暴くことは瀬古判事(神野三鈴)の不正を暴くことに繋がるのは分かっていたから。
だが、伊達原が江越に接触していたことは知らなかった。
状況を理解したのは、緑川の目の前で伊達原が動画のハードディスクを破壊した時だった。
ショックなんてものではなく、何のためにここまでやってきたのかという思いだった。
それでも、赤峰と紫ノ宮が毒の改ざんに気づいてくれた。
それでも改ざんの証拠が何も得られなかった。
「それで、先生は最後の一手に出たの。」と白木が言った。
明墨は白木に「頼みたいことがある。君にしかできないことだ。」と緋山のジャンパーを渡し「これを伊達原に渡してほしい。」と言った。
驚く白木に「もう話はつけてある。」と言う。
「彼女なら伊達原の前でも上手く立ち回るだろう。」と明墨は緑川に白木のことを報告していた。
明墨は「伊達原を法廷におびき出す。」と桃瀬の墓の前で緑川に言った。
「明墨先生の考えた作戦。それが自ら逮捕されることだった。」と白木は赤峰と紫ノ宮に説明した。
緑川は科捜研の資料室から持ち出した平塚が残した書類を赤峰と紫ノ宮に見せた。
「平塚先生が善意で残した改ざんの証拠の書類がある。そんな情報を聞き、あなたは科捜研から書類を持ち出した。この行為こそがあなたが改ざんをしたという何より確かな証拠です。改ざん前の書類の存在を知って、それを廃棄しようとしている人間がいるとしたら、それは改ざんに関与した人間以外考えられませんからね。」と明墨は伊達原に言った。
「殺人の重要な証拠である鑑定書が改ざんされていた。この事実をもって私は志水さんの再審請求を行うつもりです。」と明墨は宣言した。
「志水さんはあなたの不正によって、無実の罪を着せられた。この罪は殺人犯を無罪にするのとどっちが重いんでしょうね?」と明墨は伊達原に向かい言う。
緑川は「被告人によって示唆された別事件の証拠改ざんにつきましては、検察庁がその責任をもって明らかにいたします。」と裁判長に示した。
そんな中で、伊達原はフラフラと裁判室を出て行った。
瀬古も「明墨弁護士の裁判で疑惑が明らかになった12年前の証拠改ざんについて強く再調査を願います。」と会見を開いていた。
会見に出席していた沢原は「疑惑が事実なら、ご自身が下した判決は誤りだったということになりますが。」と瀬古に質問した。
瀬古はそれも認めた。
「国民を裏切ったあなたが今さら伊達原検事正の批判はどうなんですか?」などの質問が飛ぶが「どう捉えていただいても構いません。一人の尊い命がかかっております。どうか慎重に再調査を行ってもらえるよう、切に願っています。」と瀬古は頭を下げた。
緑川は会見後の瀬古に勇気ある告発のおかげで世論が大きく動くだろうとお礼を言った。
瀬古は緑川が明墨の同期であることも、伊達原の元に嫌々いるのも桃瀬のために自分に近づいたのも分かっていた。
それでも伊達原に黙っていたのは、同じ女性であり、伊達原の近くにいても自分たちの信念を曲げなかった緑川が羨ましかったからだった。
自分を弱い人間だと言った瀬古に「瀬古さんは司法界で常に女性たちの先頭に立ち道を切り開いてきた。今も過去の過ちと向き合おうとしている。強い人だと思います。」と緑川は言った。
赤峰と紫ノ宮は明墨の面会へ行った。
あの後、緑川の尽力もあり、伊達原の起訴が決まった。
緑川が江越を尋問し、志水のアリバイ動画の存在とそれを伊達原に渡したことを証言させた。
赤峰は「弁護側が出した証拠、あれは偽造したものですよね?平塚先生が善意で残したものなんて存在しなかった。」と聞いた。
紫ノ宮も「緑川さんが伊達原より先にあの証拠を手に入れたわけじゃない。青山さんが作った偽造書類を資料室に仕込んだだけ。」と続けた。
明墨は「人の善意なんてたかが知れてる。」と答えた。
伊達原は裁判では緑川の尋問に対して一貫して「記憶にない」で通した。
だが、証言台には倉田(藤木直人)が立ち、志水らしき男が映った動画の存在をすぐに伊達原に報告したが、「なかったことにしろ。」と言われ、隠滅したことを証言した。
倉田は自分と伊達原は国家権力を盾に自分たちの都合のいいように物事を動かし、無実の人を苦しめた。残りの人生をかけても到底償いきれるものではない。と言った。
そして、傍聴席に座る紗耶(近藤華)に向かい「志水裕策さんとご家族の皆様、信頼を裏切ってしまった国民の皆様に深く謝罪いたします。」と頭を下げた。
紗耶は涙を流した。
続いて明墨が証言台に立ち、志水の尊厳を傷つけ、幼い紗耶から父親を奪ったことを謝罪した。
伊達原は「志水は容疑をかけられるだけの原因があった。横領に手を染めた犯罪者だぞ!社会的信用を失い、家族をを失って当然だろう。それを全て私のせいにするのか!」と言った。
明墨は伊達原に「あなたが自分の罪を悔い、償いたいと思うその日まで、見張り続けます。共に地獄に落ちましょう。」と言った。
次の公判では伊達原に罪を認める発言が出たことを沢原がテレビのニュース番組で話していた。
それが志水の再審を求める声にも繋がっていた。
殺人の罪を認めた緋山は刑務所にいた。
逮捕される前に明墨は緋山に警察が来ることを伝えていた。
そのうえで、全てを話していいと言っていた。
明墨に感謝していると伝えた緋山に「誰かを助けたところで、あなたの罪が消えるわけではない。」と言った。
「犯罪者は希望を持っちゃいけないんですかね?」と聞く緋山に「被害者遺族のことを考えれば当然でしょうね。あなたが傷付けた人々に何を思い、どう行動するか、目を背けず向き合い続けることがあなたに残された使命です。」と明墨は答えた。
そして「必ず生きてください。」と付け加えた。
刑務所の緋山は羽木の妻と息子に向け、手紙を書いていた。
紫ノ宮は父の倉田の面会に行っていた。
緑川のおかげで間もなく勾留が解かれることになり、虚偽告訴幇助の件も再調査が行われる見込みだと話す紫ノ宮に「俺の弁護を降りろ。」と倉田は言った。
正当な裁判をしてもらうために他の弁護士を頼むと言う倉田は「娘に守られる父親なんてカッコ悪いだろ。」と笑った。
紫ノ宮は納得し、また面会に来ることを約束した。
緑川が桃瀬の墓に「私たち頑張ったよね。」と話しかけると、空では強い風が吹いた。
赤峰と紫ノ宮がマスコミの前で志水の再審が決定したことを伝えた。
そして、紫ノ宮と一緒に待つ紗耶の前に釈放された志水が赤峰と拘置所から出てきた。
志水は走って紗耶の元に行き、涙を流しながら思い切り紗耶を抱きしめた。
紗耶も涙を流しながら「パパおかえりなさい。」と言い、「ただいま。紗耶。」と志水も言った。
赤峰は明墨に面会に行き、志水が釈放され、再審では無罪を勝ち取ると報告した。
礼を言った明墨は「ここまで来れたのは君たちのおかげだ。」と言った。
赤峰は「ずっと気になっていたことがあります。」と「なぜ僕を事務所に入れてくれたんですか?」と聞いた。
それは、明墨が赤峰を初めてみた松永(細田善彦)に有罪が下った裁判。
瀬古に退廷を命じられた赤峰は「あなた方がそこにいるのは、罪のない人間に罪を着せるためですか?法に携わる人間が人々の信頼を背負っていることを忘れてはダメです!法廷に立つ者のそれが誇りなんじゃないんですか?」と叫びながら裁判室から引きずり出されていった。
明墨はそんな赤峰の言葉に桃瀬が残した手紙に書いてあった「私たちが司法の信頼と誇りを取り戻せますように。」という言葉を思い出させた。
そんな赤峰の信念が志水の冤罪を晴らすための力になると明墨は思ったからだ。
赤峰は「あの裁判からずっと考えていました。法律とは一体何なのか?罪を償いやり直すためにあるのが法律だと思っていました。でも今は知っています。罪を償ったからといって許してくれるほど世の中甘くない。公平でもない。そんな不条理な世の中と戦うためにアンチヒーローが必要なのかもしれません。」と話した。
そして「だから今度は僕が…あなたを無罪にして差し上げます。」と明墨に言った。
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「アンチヒーロー」最終回感想
やはり、白木は裏切っていなかった!
自分が逮捕され、裁判で伊達原の罪を明かすことが目的だった!
そして緑川も味方だった!
緑川も明墨と桃瀬の同期だったんですね。
桃瀬が明墨に伊達原の件を相談した時に緑川も同席していたとは!(だから日記には”明墨に相談”ではなく、”同期に相談”と書かれていたんですね。)
緑川にも桃瀬のファイルが託され、明墨は検察の外から、緑川は検察の中から動画の存在を探っていた。
そして、緋山がその証拠の動画を撮った人物だと気が付いたのも緑川だった!
そこから、明墨が緋山を弁護することになり、動画のために無罪にした。
緑川が味方と分かってからは怒涛の伏線回収でした。
伊達原は無事に裁かれることになり、志水も再審が決まり保釈され、12年ぶりに紗耶と抱き合うことができました。
そんな志水の再審は赤峰と紫ノ宮で担当するのでしょう。
志水の再審はこれから…明墨も勾留されたまま…ということは、続編も…?なんて期待してしまう終わり方でした。
結局、糸井一家殺人事件も本当の犯人は分からないままですからね。
明墨に「あなたを無罪にして差し上げます。」と言った赤峰は二代目・アンチヒーローになるようでした。
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